「複利の力」がセールストークに安易に使われすぎ?

投信セールスでよく使われている「複利の力」

世の中、「投資、投資」と官民あげての投資ブームです。

その中で、引っかかっている点が1つあります。

証券会社や銀行などが、投信積み立てを勧誘するセールストークによく使われている「複利」というキーワード。

ネットで検索してみても、「複利効果」とか「複利の力」がたくさんヒットします。

投信は、確定利回り商品でもないのに、なぜ「複利の力」なのでしょうか?

そもそも複利とは

通常、複利とは金利の計算方法の一種で、元本と利息を合わせて、その合計に再び利息がつくという、いわゆる「利息が利息を生む」ことを言います

1年複利であれば、1年目の利息を元本に加えた合計に、2年目の利息がかかります。

以下の例は、元本1万円、5%複利の運用のケースです(端数切捨)。なお、カッコ内は単利(当初の元本にのみ利息がつく)の計算結果を参考でお示ししています。

  • 1年目:10,000 × 1.05=10,500円(単利 10,500円)
  • 2年目:10,500 × 1.05=11,025円(単利 11,000円)
  • 3年目:11,025 × 1.05=11,576円(単利 11,500円)
  • 4年目:11,576 × 1.05=12,154円(単利 12,000円)
  • 5年目:12,154 × 1.05=12,761円(単利 12,500円)

上記の事例だと、複利5年目の利息は2,761円と単利(2,500円)より多くなっていますが、この差は期間が長くなればさらに大きくなります。

 

投信の場合はあくまでも年率リターン

投信の場合、価格変動商品ですから「利息が利息を生む」わけではありません。

投信には、年率リターン(1年あたりの収益率)という物差しがあります。

この年率リターンと利息の違いは何でしょうか?

例えば、当初の基準価格が10,000円の投信が以下のように動いたケースで考えてみます。

  • 1年目 10,200円(収益率+  2.0%)
  • 2年目   9,500円(収益率▲  6.9%)
  • 3年目 10,500円(収益率+10.5%)
  • 4年目 10,000円(収益率▲  4.8%)
  • 5年目 11,000円(収益率+10.0%)

1年目は収益が200円なので、年率リターン(収益率)も+2.0%ですね。

毎年の収益率をみると▲6,9%〜+10.0%までバラバラですが、5年全体のリターンを年率でみるとどうなるでしょうか。

答えは5年目の収益が1,000円なので年率リターン(1年あたりの収益率)は+1.924%になります。

これは、収益率が5年間合計で+10%なので、年平均+1.924%の上昇が5年間続いたのと同じ、という意味です(下記参照)。

  • 1年目 10,192円(収益率+1.924%)
  • 2年目 10,389円(収益率+1.924%)
  • 3年目 10,588円(収益率+1.924%)
  • 4年目 10,792円(収益率+1.924%)
  • 5年目 11,000円(収益率+1.924%)

ここでお気づきになったと思いますが、年率リターン(収益率)はあくまでもトータル収益から割り戻した平均値であって、そういう意味では後付けの数字というか、結果論でしかありません。

決して、投信が年1.924%で複利運用しているわけではないのです。

利息の場合は複利運用になるので、この点が大きな違いになります。

 

投信における「複利の力」とは何?

このように投信は複利運用されているわけではないのに、やたらと「複利の力」が強調されているのは、どういうことでしょうか。

差し当たり「複利の力」を使っている理屈としては、以下のとおり、①配当の再投資、②世界経済の成長(拡大再生産)、の2つが考えられます。

配当の再投資

配当を再投資すれば、配当率による複利運用ということになります。

ちなみに投信のベンチマークとなる指数(インデックス)には、「配当込み」と「配当抜き」の2通りがあります。

もし配当の再投資を考慮しているのであれば、「配当込み」指数がベンチマークになるでしょう。

ただし、「複利の力」を強調しているセールストークをみていると、特段、ベンチマークで「配当込み」と「配当抜き」を区別しているようにも窺えません。

おそらく、多くの投信セールスの場合、配当再投資を意識して「複利の力」を使っているわけではないのでしょうね。

世界経済の成長(拡大再生産)

世界経済は、拡大再生産を続けて、長期的に成長しています。

世界の株式市場も、この経済成長を反映して株価は長期的に上昇を続けています。

すなわち、世界経済は成長率の複利で拡大しているので、それを映し出している株価も長期的に同様の伸びで上昇するはず、という理屈なのでしょう。

この場合、投信の「複利の力」とは経済成長を間接的に表している言葉だと考えられます。

 

まとめ

投信のセールストークをはじめ、さまざまなネット上の記事に「複利の力」、「複利効果」などの言葉が氾濫しています。

もし、世界経済の成長の果実を受け取れるという意味で、「複利の力」を使っているのであれば、それは投信に限らず、株式全てに言えるはずです。

でも、証券や銀行は、株式投資について「複利の力」が働きます、と普段は言ってませんよね。

セールストークで使われているのは、もっぱら「投信」ばかり。

投信だけ「複利の力」が働くかのような印象操作が行われると、中には投信は複利運用していると誤解する方々が出てくるのではないでしょうか。

世界経済の成長という漠とした果実を、「複利の力」と強調し過ぎるのはいかがなものだろうか。

それが、ここで申し上げたかった私の素朴な疑問なのです。

読んでくださって、ありがとうございました。

ともに経済的自由を手に入れられますように!

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